ロートアイアンとは

ロートアイアンとは、鉄を装飾的に加工した建材のことです。厳密には鍛鉄、練鉄という意味の言葉なのですが、建築でロートアイアンという場合は、門扉やフェンス、窓枠などに備え付ける鉄製の建材を指します。

溶かした金属を型に流し込んで成型する鋳物と違い、ロートアイアンは赤くなるまで鉄を熱して、ハンマーで叩いたり、捻じったりして成型していきます。これにより鉄に独特の曲線美を持たせ、見るものを惹きつける芸術的な風合いを実現するわけです。

中世のヨーロッパでは、このロートアイアンをドアの補強や窓枠、門扉などに備え付けていました。当時実用的な建材であったのはもちろんですが、美しく気品のある造形が魔除けとなる、という考え方が根底にあったといいます。

日本の住宅ではあまり見られませんでしたが、近年は審美眼に優れた方を中心に、インテリアやエクステリアの一部としてロートアイアンを採用する住宅も増えています。

デザイン性

気品のある美しさ、というのが、ロートアイアンの大きな特徴です。鉄でありながら表現力が豊かで、見た目はもちろん、それが落とす影すらも芸術性を備えています。彫刻的な装飾は格式を感じさせ、画一的な日本の住宅にあって一際目を引くことでしょう

独自性

炉で熱した鉄を、叩いたり曲げたり溶接したりして加工する、という工程は、中世からほとんど変わっていません。基本的には、職人が1つひとつ丁寧に作業して作りあげています。大量生産の既製品にはない独自性、というのも、ロートアイアンの魅力と言えます。

耐久性

しなやかな鉄は、耐久性にも優れています。錆に弱い、という弱点がありますが、表面をメッキや塗装で適切に処理すれば、錆による劣化も最小限に抑えることができます。また、単に耐久性が高いだけでなく、見た目の美しさが損なわれないという点も注目したいポイントです。ロートアイアンは、年を重ねるほどに味わいを増していきます。新品なのにあえて錆たような仕上げを施し、アンティーク調にするといった手法もあるほどです。表面につく錆すらも装飾的に見せてしまう、というのは、本物の素材ならではの特徴でしょう。

セキュリティ

ロートアイアンを効果的に使うと、審美性を損なわずに住宅のセキュリティを高めることができます。事実、中世ヨーロッパではそうした目的も兼ねてロートアイアンを住宅に採用していました。「美しいセキュリティ」というのは、ロートアイアンの代名詞でもあります。

押さえておきたい注意点

ロートアイアンは魅力的な建材ですが、住宅に採用する場合は注意が必要です。

大きなデメリットがある、というわけではないのですが、国内に職人が少ない分、コストが高くついてしまうのです。オーダーメイドのデザインを依頼したら、門扉1つで100万円を超えてしまった、というケースもあります。

また、デザイン性が高い反面、相応の知識を持っていないと住宅のデザインにマッチする部材の選定が難しい、というデメリットもあります。

例えば格子1つとっても、角にするか丸にするか、フラットにするかハンマートーン(ハンマーで叩いたような凹凸のある表面)にするか、選択肢は無数に考えられます。

家づくりにおいては、こうした装飾選びに悩むのも大きな楽しみとなります。

とはいえ、適切なアドバイザーがいないと、イメージを形にできないかもしれません。どんなハウスメーカーでも、要望を出せば叶えてもらえる、という類の建材ではないのです。

ロートアイアンを効果的に使った住宅をイメージしているなら、相談先をしっかり吟味されることをおすすめします。

山川設計のロートアイアンについて

山川設計では、一邸ごと、部位ごとにデザイン案をデッサンし、職人たちに形にしてもらっています。当初は機能的でシンプルなデザインが多かったのですが、現在はより美しく、気品を醸し出すデザインを志向しています。

一度起こしたデザインを流用したり、同じロートアイアンを複数つくって販売することは一切行っていません。「世界にひとつしかない」という価値を追求しています。だからこそ、デザインのバリエーションも極めて豊富である、という自負があります。

特注品のロートアイアンは高い、というのは前述の通りですが、山川設計ではコストを抑えるために、フィリピンに自社工房を構えています。

フィリピンは昔、スペインの統治下にありました。そのためロートアイアンを用いた邸宅が多く、技術力の高い職人も大勢います。しかも、日本から近い。そうした背景もあり、フィリピンに工房を構えることにしたのです。同工房では、ロートアイアンのほか、模型や外壁材などの製作も行っています。

端的に言えば、職人の手間賃がかかる仕事を極力なくして、低コストでハイクオリティなものをつくれる体制を整えています。

もしロートアイアンを活かしたデザイン住宅をイメージされているなら、ぜひ1度相談にいらしてください。サンプルやスケッチをはじめ、イメージをより具体的にするお手伝いをさせていただきます。