「RC構造は断熱性能が低いって本当?」

RC住宅の建築を検討するなかで、このような疑問をおもちの方は多いのではないでしょうか。

実は、RC構造はしっかりと断熱対策をすることで優れた断熱性を発揮します。断熱性能が高いRC住宅を建てるためには、窓やサッシなどの開口部にも配慮した断熱対策が必要です。

本記事では、RC構造の断熱性の真相や、断熱性能が高いRC住宅を建てる方法を解説します。断熱性能に優れたRC住宅を建てたいとお考えの方はぜひ参考にしてください。

RC構造は断熱性能が低いって本当?

RC構造は「断熱性能が低い」といわれがちですが、一概にそうとはいい切れません。

たしかに木造と比較すると、木造のほうがRC構造よりも断熱性能を高くしやすいでしょう。しかし、RC構造は木造よりも気密性に優れ、外気を室内に通しにくいため、しっかりと断熱対策をすれば他の構造よりも断熱性が高くなる可能性を含んでいます。

RC住宅は断熱性能が低いといわれる理由には、従来のRC住宅に断熱材が入っていなかったことが挙げられます。

そもそもRC構造は、建物の耐震性や強度に優れた施工法として開発された構造です。そのため、RC住宅が建て始められた当初は、断熱処理がまったく行われていませんでした。断熱処理されていないRC住宅は熱伝導率が高いため、外気温の影響を受けやすくなります。

この認識が現代まで残り、「RC住宅は寒い」「断熱性が低い」などの誤解につながっていると考えられます。

なお現在の日本の住宅は、断熱性能のみで快適性が語られる傾向がありますが、快適性を高めるのであればC値(気密性能を表す数値)にも着目すべきです。RC住宅のC値を高め、適切に断熱処理を施せば、夏は涼しく、冬は暖かい快適な住環境を手に入れられるでしょう。

2025年4月からは省エネ基準の適合義務化によりRC住宅の断熱性向上が必須に

2025年4月から、すべての新築の住宅・非住宅に省エネ基準への適合が義務付けられる(※1)ことにより、今後RC住宅を建てる場合は今まで以上に断熱性の向上が求められます。

省エネ基準に適合するには、「断熱等性能等級4以上」「一次エネルギー消費量等級4以上」の要件を満たさなければなりません。そのためには、より断熱性の高い断熱材を入れる、省エネ性の高い空調・給湯設備を採用するなどの対策が必要になります。

なお、省エネ基準への適合義務は、既存住宅のリフォーム、リノベーションも対象です(※2)。

また、2030年には現行の省エネ基準がZEH水準へと引き上げられる予定です。そのため、これからRC住宅を購入、リフォームする場合は、こうした傾向を見越して住宅の断熱性や設備を検討するとよいでしょう。

※1 参考:国土交通省「家選びの基準変わります
※2 参考:国土交通省「(2)増改築時の省エネ基準への適合性評価について

RC構造の断熱方法は「外断熱工法」と「内断熱工法」の2種類

RC構造の断熱方法には、以下の2種類があります。

  • 外断熱工法
  • 内断熱工法

それぞれ詳しく解説します。

外断熱工法

RC構造の外断熱工法のイメージ

外断熱工法は、RC躯体の外側を断熱材で覆う工法です。建物全体にわたって躯体ごと包むように断熱材を入れるため、すき間が生じにくく、高い断熱性を確保できます

外断熱工法では、躯体の外側で熱を遮断します。そのため、夏は外部の熱が室内に入りにくくなり、冷房の効率的な運転が可能です。冬は鉄筋コンクリートの蓄熱性の効果が高まることで、内部の熱が外に逃げにくくなり、室温を暖かく保てます。結果、年間を通して快適な空気環境を実現できるでしょう。

ただし、工事が複雑で、躯体全体を覆うため断熱材が必要となることから、建築コストが高くなりやすい点に注意が必要です。

また、バルコニーなどは断熱材で覆えないため、熱を伝えやすい箇所が部分的に生じ、断熱性が低下する「熱橋(ヒートブリッジ)」と呼ばれる現象の発生も懸念されます。

▼外断熱工法の熱橋のイメージ図

RC構造の外断熱工法で発生する熱橋のイメージ

熱橋を防ぐには、バルコニーと建物の接合部に熱を遮断する部材(サーマルブレーク)を入れる、断熱モルタルや高断熱仕上げ材を使用するなどの対策が必要です。

また、外断熱工法のもう一つの懸念点として、外壁の装飾性が下がることが挙げられます。断熱材を外壁に貼り付けることで、仕上げの自由度が制限されるためです。

装飾性を担保するには、木造同様、サイディングと呼ばれる仕上げ用の板材を建物の外壁表面に貼り付けるのが一般的です。しかし、RC住宅ならではのデザインである大判タイルや石張りを採用しようとすると、レールの貼り付けも必要になるため、コストが高くなりがちです。外断熱自体が内断熱よりも高コストであるため、結果的にコストがかさむ可能性があります。

内断熱工法

RC構造の内断熱工法のイメージ

内断熱工法は、建物の内側に断熱材を入れる工法です。RC躯体と室内の壁の間に断熱材を埋め込むことで断熱性を確保します。

RC住宅の内断熱工法には、以下の2つの方法があります。

断熱ボードを貼りつける方法発泡ウレタンフォームを吹きつける方法
内容RC躯体に硬質のウレタンフォームでできた断熱ボードを貼りつける泡状のウレタンフォームをRC躯体に直接吹きつける
メリット・ボード状になっているため扱いやすく、比較的施工が容易である
・壁や床、天井など平らな場所に敷き詰められる
・曲面や凹凸のある部分に施工できる
デメリット・曲面や凹凸部分への施工がしにくい・建物が経年劣化により変形することで隙間が生じる可能性がある・吹き付けに高い技術が必要になる

内断熱工法は、外断熱工法よりも施工が簡単で安価な断熱材を使うため、建築コストを抑えられる点がメリットです。

ただし、柱や梁で断熱材が途切れる部分ができると、熱橋が生じます。

▼内断熱工法の熱橋のイメージ図

RC構造の内断熱工法で発生する熱橋のイメージ

内断熱工法によって生じる熱橋を防ぐためには、断熱補強の折り返しを行う必要があります。

中古・既存のRC住宅の断熱性はリフォームで改修できる

中古・既存のRC住宅の断熱性は、断熱リフォームを行うことで改修できます。RC住宅の断熱リフォームでは、コスト削減と工期短縮のため内断熱工法が採用されるケースがほとんどです。

RC住宅の断熱性を改修する際は、窓の見直しも必要になります。室内の熱の約6割が、窓やドアなどの開口部から逃げるためです。窓の断熱リフォームも行えば、建物の気密性が高まることで、断熱性の向上が期待できます。

断熱リフォームには、国や自治体が行っている補助金制度を使える場合があります。補助金制度を利用すれば、コストを抑えての断熱リフォームが可能です。

断熱性能が高いRC住宅を建てる際のポイント

断熱性能が高いRC住宅を建てるなら、以下のポイントに留意しましょう。

  • 適切な厚さ・種類の断熱材を選ぶ
  • 断熱性が高い窓を取り入れる
  • インナーサッシを設けて二重窓にする
  • RC住宅の施工実績が豊富な業者に依頼する

適切な厚さ・種類の断熱材を選ぶ

断熱性能が高いRC住宅を建てるには、住宅の構造に合った厚さ・種類の断熱材を選ぶことが重要です。

断熱材は、地域によって必要な厚さが異なります。工務店や設計事務所に相談すれば、自分が住む地域で必要な断熱材の厚さがわかるため、問い合わせてみましょう。

RC住宅に使われる断熱材には、主に以下の種類があります。

断熱材の種類特徴
硬質ウレタンフォーム・ボード状のタイプと現場で吹きつける泡状のタイプがある
・泡状のものは吹き付けた瞬間に硬化するため、つなぎ目のない施工ができる
ポリスチレンフォーム・蒸気によって発泡するビーズ状のタイプと発泡させながら押し出して成形するタイプがある
・水に強く吸湿しにくいため、外断熱に向いている
グラスウール・リサイクルガラスを細い繊維状に加工した断熱材・袋詰めして柱や梁の間に埋め込むことが一般的で、床や壁、天井などに使用される
・湿気を通す性質があるため、水分が入り込むと縮み、断熱性が落ちることに注意が必要
ロックウール・高炉スラグや玄武岩などを原料とした繊維状の断熱材・鉱物由来の素材のため、湿気に強く燃えにくい
・外断熱と内断熱のどちらにも使える

それぞれでかかるコストや適した構造、断熱工法が異なるため、依頼先の業者とよく相談して決めましょう

断熱性が高い窓を取り入れる

断熱性が高い窓を取り入れることも、断熱性が高いRC住宅を建てるための重要なポイントです。

窓は、住宅の中で最も熱損失が大きい部分です。断熱材を適切に入れても、窓が単板ガラスだと室内の熱が外に逃げてしまい、十分な断熱効果を得られなくなります。窓を複層ガラスにすれば、室内の熱が外に漏れにくくなるため、室温を一定に保てるでしょう。

複層ガラスは、ガラスの枚数が多いほど断熱効果が高くなります。ただし、ガラスの枚数分厚みと重量が増すため、開閉時に扱いにくくなることがあります。

その対策として有効なのが、複層ガラスにガスを注入する方法です。ガラスとガラスの間に、アルゴンガスなどの熱伝導率の低いガスを注入すれば、複層ガラスの断熱効果がより高まります

熱放射を抑制する特殊な金属膜をコーティングした「Low-Eガラス」とアルコンガスの組み合わせも、高い断熱効果を発揮します。

インナーサッシを設けて二重窓にする

RC住宅の断熱性能を向上させるためには、インナーサッシを設けて二重窓にすることも効果的です。

住宅に使われるインナーサッシには、主に以下の2種類があります。

種類断熱性能コスト
樹脂サッシ高い高い
アルミサッシ低い低い

省エネ法の改定により、今後RC住宅ではより高度な断熱対策が求められるため、断熱性能が低いアルミサッシは採用が難しくなります。よって、RC住宅では樹脂サッシを選択する必要がありますが、住む場所が防火地域の場合は、樹脂サッシを使えない可能性があるため注意が必要です。

解決策として、断熱と防火の両面に優れる樹脂+アルミの複合サッシにする方法があります。複合サッシにすれば防火認定が受けられるため、防火地域でもRC住宅の建築が可能になるでしょう。

RC住宅の施工実績が豊富な業者に依頼する

断熱性能の高いRC住宅を建てるためには、RC住宅の施工実績が豊富な業者に依頼することも大切です。

RC住宅の断熱施工は、まだ歴史が浅く、業者によって技術の差が出やすい傾向にあります。とくに、外断熱と装飾性は両立が難しく、設計士の知見や技術力が問われやすい部分です。

RC住宅の施工実績が豊富な業者なら、RC住宅の断熱についての知識やノウハウをもっているため、デザイン性に優れた高断熱のRC住宅を実現できるでしょう。

まとめ

RC構造は適切な断熱対策をすれば、むしろ断熱性が高くなります。断熱性能が高いRC住宅を建てるのであれば、外断熱工法が推奨されます。

ただし、躯体の外側に断熱材を入れると、外壁の装飾性が下がる懸念があります。

山川設計なら、デザイン性も確保した断熱性が高いRC住宅の施工が可能です。コンクリートの上に模様を吹き付けてデザインする独自の工法により、装飾性を落とさずに外断熱ができます。そのため、外断熱を採用しつつ、高級感のある大判タイルや石材のデザインの実現が可能です。

徹底したヒアリングと高い提案力で、お客様の理想の住まいを叶えるお手伝いをいたします。相談は無料なので、ぜひお気軽にお問い合わせください。