ご夫婦そろって旅がお好きで建築やインテリアにも関心が深いNさん。5年前に山川設計で思いの丈を注いだ住まいを新築され、住宅誌『モダンリビング』にも掲載されました。それから5年、実際の住み心地を伺ってみました。

自分らしい世界を創りたかった

Qこだわりを貫かれた家づくりだったのですね。

土地の選定から間取り、インテリアの仕上げまで、すべてについて山川設計と相談しながら、一緒に設計案をつくりあげていきました。楽しかったですね。竣工間もなくの頃にもお話ししましたが、この家を設計するときに「お任せします」と設計者に委ねてしまったものは何もないんです。もともと山川設計は、建て主の思いを聞いて、それを一緒に実現するというスタンスで設計に関わってくれるので実現したのですが、とにかく間取りもインテリアの仕上げも、すべて自分の意見を持って相談しながら決めていきました。タイルもたくさん使っていますが、それも場所ごとに慎重に選んで、張り方や目地の太さといったことまで細かく決めています。ですから、ここはダメだった、とか失敗したと後悔するようなものは基本的にはありません。とても満足しています。完成する前の打ち合わせを含めて楽しい家づくりでした。

Q実際住まわれていかがですか?

特に吹き抜けのリビングの感じがいいですね。アクセント壁に使ったグレーのタイルもこだわって選んだだけのことはありました。わが家の土地は、表通りを背にして奥に入る道路の突き当たりにあって、正面以外、敷地の三方は住宅で囲まれています。それだけにプライバシーの確保が重要で、窓の位置や大きさは設計のときから慎重に考えました。リビングの2面に設けた窓の位置も、壁の中央ではなくコーナーに寄っていて少し変則的なのですが、隣家との関係を考えて決めたもので、実際、周囲からの視線がまったく気にならず、しかも緑が見えてとてもいい具合です。

Qリビングのソファを新しくされたそうですね。

リビングは私だけでなく家族のお気に入りの場所です。吹き抜けの上からの光や階段室からの光もあって、明るく気持ちのよい場所でくつろぐことができます。以前はやや重い感じの革のソファだったのですが、少し軽い感じのものに買い換えました。こういう楽しみも新しい住まいならではですね。

シャワーブースのある書斎が快適

Qほかに気に入っていらっしゃるのはどんなところですか。

玄関正面の大きな窓をバックにした階段のデザインも、もともと私のスケッチを参考に山川設計がプロとしてデザインしてくれたもので、特に私のお気に入りの空間です。RC造の住宅ならではの防音性や堅牢さ、気密性や断熱性の高さも期待以上でした。

Q書斎が大活躍していると伺いました。

主寝室には私の書斎と休憩スペース、さらにシャワーブースを設けているのでとても快適です。シャワーブースは贅沢かなとも思いましたが、わが家は娘が3人ですから彼女たちが水まわりスペースを使う時間は長く、しかも成長すればするほどその時間は延びるでしょう。おそらくそうなるだろうという予感もあって、書斎コーナーの一角にシャワーブースを設けたのですが、大正解でした。娘たちに気兼ねなく使えますからね。毎日の生活のことなのでこれは本当によかったと思っています。1日ここに籠城していても大丈夫です(笑)。

気になるところもあるが、それは暮らし方で補えばいい

Q5年お住まいになって気になるところはありませんか?

まったくないということはありません。例えば、独立キッチンはやはり孤立感が出てしまいますね。リビング・ダイニングがすっきりした落ち着きのある場所になる、ということを優先したのですが、どうしても妻がキッチンで一人になってしまいます。理想はフォーマルなダイニングと家族のダイニングの2つがあることなのでしょうね。現在のキッチンは広めで窓も大きく、明るく快適な場所ですし、ダイニングとキッチンの間の建具はガラスに、といった工夫もしていますが、やはりキッチンはリビング・ダイニングと一体のほうがよかったかなと感じています。少なくとも、もう少し家族が集まれる場所にできればよかったですね。それから、2階のリビングと3階の個室は吹き抜けでつながっていますが、音が予想以上に上に上がります。だからリビングと3階で会話ができるという良さもありますが、テレビの音が響くというマイナス面もありますね。

Q絶対にこっちが良い、という言い方はできないのかもしれませんね。

そう思います。独立キッチンも吹き抜けも、結局一長一短であり、トレードオフの関係ですね。どちらかを取れば、どちらかが不利になるわけで、絶対にこちらであるべき、ということはないのだと思います。それぞれの家族が、その家族に合うものを選べばいいと思いますし、弱点として出てしまうものは別な形で、つまり暮らし方の工夫で補うことを考えればよいのではないかと思います。

Qほかに気付かれたことはどんなことでしょうか。

壁のクロスの継ぎ目が目立つところが出てきたり、建具の木に少し狂いがでるといったことはありましたが、これは程度の違いこそあれ起こることだと思っています。メンテナンスの体制をしっかり取ってくださっていれば問題ないので、その点はまったく心配していません。また、わが家の外壁はピュアな白を選んでいるので、汚れが目立つようになるのも早いのではないかと心配していたのですが、この点はいい意味で予想が外れました。5年経ったとは思えないほどきれいな白い外壁を維持しています。ただ、屋根の軒先の立ち上がり部分に黒い雨だれのような筋が入ってしまいました。外壁は塗り直しながら維持していくことになるので、その時に塗装して元に戻せばよいとは思いますが、それにしても汚れが目立つようになるのが少し早いなという気がしました。建物にアプローチしてくる正面からよく見える位置なので、今後改善していただけるとよいと思います。
住まいというのは、人が暮らし、時間が経てば必ず少し狂いが出たり故障したり汚れたりするものだと思います。大切なのは設計事務所とも施工会社とも、竣工して終わりではなく、長いメンテナンスの時間を一緒に歩んでいくことができることではないでしょうか。そういう意味では私たちは山川設計を信頼していますし、期待しています。これからもぜひよろしくお願いします。